なぜか方淵視点のお話。 

原作寄り
方淵




最近気になる次男くん。
SNS白友さんに「方淵ネタでなんか書いて」とつぶやいたら「萌えない。興味ない。」と一蹴されましたがそう言いつつもサラサラっと素敵SS書き上げて下さいました。


すごーい(*´Д`)アリガトウ!


という事で挿し絵も描かせて頂きました。







【原作沿い】【黎夕】【方淵視点】


「何事だ」
官吏が忙しく働く中、入り口での小さな問答に方淵は声を掛けた。
「あ、方淵殿。実は陛下宛に急ぎの書簡をと持って来たらしいのですが―――」
見れば相手の官吏は政務室に従事する者ではない。
どうしたらいいのかと戸惑う視線を方淵と対応していた官吏に彷徨わせている。
「陛下は今席を外されている。そんなに急ぎのものなのか」
黎翔が出て行った時の様子を思い出し、方淵は心の中で舌打ちをする。
「はあ・・・宰相様より大至急との事でして」
走るようにここまで来たのか、軽く息を弾ませる官吏に眉間の皺が深まる。
「どうしましょう。陛下は今―――」
助けを求める官吏二人に見詰められ、方淵は溜息をひとつつくと手を差し出した。
「私が陛下にお届けに行こう」
安堵する様子に、また内心舌打ちをしながら。




その日。
午後に政務を再開して数刻経った頃、妃宛に出入りの商人が来たとの知らせがあった。
妃は王に請われ政務室の片隅にちんまり座っていたのだから、知らせが来るのは間違いではない。
だが普通妃は後宮に暮らし、政治を行う場に出てくる事はない。
それなのにこの妃は「王の望みだから」と、それこそ毎日のようにほいほいと政務室に顔を出す。
何度進言しても聞き入れては貰えないが、方淵からすれば不満な事に変わりない。
(商人でも何でも良いから政務室から出て行き、そのまま後宮に篭ってしまえ)
そう思い内心ほくそ笑んでいると、敬愛する王の声が微かに耳に届いた。
「妃一人では碌に見もしないだろう。私も行こう」
その言葉に方淵の額に青筋が一本浮かぶ。
厳粛に政務に勤めていた主が、たかが女の買い物如きに貴重な時間を割くと言い出したのだ。
(あの馬鹿妃は買い物ひとつ満足に出来ないのか!)
方淵が妃を睨みつける中、黎翔は夕鈴を抱き上げ「暫し休憩だ」と言い置いて出て行った。

方淵が苦々しく思い出しながら四阿に着くと、李順を伴った王と妃が椅子に腰掛けていた。
目の前には商人が平伏しながらも様々な商品を勧めている。

方淵るる産SS 


方淵からすれば妃は別に美しくも淑やかでもない娘だった。
自らが「この方ならば」と敬愛する王に相応しいとは到底思えない。
見目も麗しく才能溢れる彼の方ならばもっと素晴らしい女人を手に入れられる。
だが目の前の王は愛しげに妃の肩を抱き寄せ、時折頭に口付けを落としながら楽しそうに、真っ赤に染まる妃を見詰めていた。
「その簪は?君の髪に良く映えそうだ」
「へ、陛下、そんな高そ・・・じゃなくて、細工の繊細な物は、触るのが怖いですわ」
(それは貴女ががさつだからだ!)
口に出来ない思いに青筋が一本追加される。
「ではこの首飾りは?君の桜色の唇と同じ色合いの石だ。良く似合う」
「そんな重そ・・・でもなくて、大きな石は落としてしまいそうで私にはもったいないです」
(それは貴女が大人しくしていないからだ!)
更に青筋が一本追加された時、李順が方淵に声を掛けた。
「何か急ぎの用件ですか?」
王は最初から気付いていたのだろう。眉ひとつ動かさずに妃の髪に口付ける。
「は。宰相様より大至急との書簡が届きましたのでお持ちしました」
礼をとり書簡を渡すと、李順は中身を検め王へと耳打ちをする。
黎翔はほんの僅かに目を細めると、恥ずかしそうに俯く妃の額に口付けてから「そこで待っていろ」と言った。

書簡の内容は勝手に見れないので勿論判らない。
だが急ぎであるのは間違いないだろう。
妃との時間を邪魔されるのを殊更嫌う王を熟知した側近が耳打ちしたのだから。

礼をとり、失礼に当たらないよう充分注意を払いながら主の様子を窺う。
いつ何を命じられても即座に応えられるように。
だが方淵の思惑知ってか知らずか、黎翔は相変わらず夕鈴を抱き寄せ髪を弄んでいた。
(あんな妃のどこがそんなにお気に召していられるのか)
苦虫を噛み潰す思いで観察を続けていると、ふと妃の妙な行動に気付いた。

抱き寄せられるまま王の肩に頭を預けていると見えた妃だが、片方の手が僅かにぷるぷると震えている。
その手は王の襟元に置かれ一見すると縋り付いている様に見えるのに、よくよく目を凝らせば掌は開かれ必死に押しているとも取れる。
(妃が国王を押し返すなど、そんな馬鹿な)
軽く頭を振り過る考えを払う。
そして更に観察を続けた。
(相変わらず陛下は麗しく、所作のひとつひとつが気品に満ち溢れておられる)
そう感じた己に満足していると、またしても妃の変な行動が目に付いた。

王があれやこれやと装飾品を妃に勧めるも、悉くケチを付け断る妃。
これがそもそも方淵からすれば可愛気の欠片もないのだが―――黎翔が勧める品を顔を引き攣らせて見た後、必ずちらりと李順に視線をやる。
対する李順も何事もないように装いながら僅かに首を振ったり目線を横に逸らしたり。
(・・・何だ?あれは)
方淵が気付き不思議そうな色を瞳に乗せるのとほぼ同時に、黎翔が夕鈴の顎に指を掛け、目を合わせるように上向かせた。
「君一人では何も欲しがらないだろうと同席したのだ。その愛らしい姿に似合う物を私に贈らせて欲しい」
甘やかな笑顔を向ける黎翔に、夕鈴の貼り付けた仮面が僅かにずれる。
「ま、まあ陛下ったら・・・っ。私は今のままでとても満足しておりましてよっ」
「愛しい妃に贈り物をする楽しみを私から奪うつもりか?」
髪を一房掬い口付けを落とすと、夕鈴はそのまま固まった。

李順は国王夫妻の様子に呆れた溜息をつくと、小声で方淵に言った。
「すぐに終りますから、先に政務室へ戻っていてください」
「は・・・しかし・・・」
(急ぎではないのか)
そう続ける前に、妃の「ぎゃっ」という悲鳴が小さく響く。
何事かと視線を向けようとした瞬間、李順が方淵の目の前に立ちはだかり遮った。
「す・ぐ・に!終りますから!先に戻っててください!!」
ひくつく笑顔に気圧される。
「・・・は。政務室にてお待ちしております」

追い立てられるように辞した方淵は、首を捻りながら先刻の悲鳴に軽い苛立ちを覚えていた。
(仮にも妃ともあろう者が「ぎゃっ」とは何だ、「ぎゃっ」とは!全く、陛下の女人の趣味だけはどうにも理解し難い)

だが。
方淵も判ってはいるのだ。

黎翔が夕鈴と共にいる時、どんな顔をしているのか。
周りから恐れられている平素の様子からは想像もつかないほど優しい眼差し。
全身で愛しさを伝えんばかりの甘い狼陛下。
自分には決して見せてくれないその寛いだ顔は、唯一の妃だけが引き出せるのだ。
そして、恥ずかしそうに頬を染めながらも王といる時の妃は本当に幸せそうに見える。

気に食わない。気に食わないのだが。

「陛下の癒しがそこにあるのならば、忠実な臣下としては護らねばならんだろう」
(それでも気に食わないがな!)
負け惜しみのように心の中で叫ぶと、方淵は政務室へと戻って行った。




夜。
黎翔が夕鈴を訪れ二人きりになると、いきなり夕鈴が叫び出した。
「もうっ!!陛下は商人さんに会うの禁止ですっ!!!」
「えー?何で?結構いい物揃ってたでしょ?」
手を引き長椅子に座ると、ぷりぷりと怒る夕鈴は目の前に立ったままきぃぃと唸る。
「李順さんの目が怖くて明日から政務室に行きたくないですよっ!」
「えっ、ちょ、ちょっと待って夕鈴!」
黎翔は慌てて夕鈴を抱き寄せ膝に乗せると宥めにかかった。

元々商人に会っている時に夕鈴が李順の様子をちらちら盗み見ていたのは、買うべきか買わざるべきかを確認していたのだ。
黎翔に任せておけば確かに品が良いものは選ぶだろうが値段は気にしないに違いない。
その考えに則り、二人で目配せし合っていた。
李順からすれば、「品が良く、値段も手頃で、妃がつけても恥ずかしくないハイセンスな物」以外勝手に買われては困る。
本当ならば何も必要ないと思ったが、「唯一の妃を寵愛する国王」が自ら商品を見て何も買わなければ、気に入る物を揃えられない商人の信用問題に関わる。
だから1点か2点、李順の目に適う物を購入しなければならなかった。夕鈴を甘やかそうとする黎翔を上手く回避しながら。
倹約を愛する夕鈴はその理由に納得し李順と結託し、何とか黎翔の気を削ごうと必死になった。
それなのに黎翔はと言えば甘い甘い狼陛下の演技で夕鈴を翻弄し困らせ続けたのだ。
「あ、あんな甘い演技・・・っ!居たたまれませんっ!」
「商人は情報が早いから寵愛を見せ付けるのは必要じゃない?」
あっけらかんと言う黎翔に、夕鈴は瞬時言葉に詰まる。
「で、でもっ!陛下が行かなければあんな高い簪買う必要なかったじゃないですか!」
「夕鈴一人じゃどうせ何も買わないでしょ?妃が気に入れば貴族や下町でも流行るから、流通を良くする為には手軽な方法だよ」
黎翔の膝に横抱きにされ、更に上半身だけ向かい合わされているのだが、必死に言い募る夕鈴には気付く余裕がない。
「で、でもでもっ!商人さんがいるのに、あっ、あんなにぎゅっとかちゅっとか・・・っ!!」
思い出すだけで顔から火を噴きそうである。
何度か意識が飛びそうになるのを必死に耐え、黎翔の買い物を阻止したのだ。
「だから商人に見せる為にやってたんだってば」

ま、それだけじゃないけどね。

心の呟きは当然口には出さない。
至極真っ当な理由を突きつければ真面目な夕鈴は仕事で必要なのだと渋々ながらも納得する。
「それに、前夕鈴が商人に会った時危ない目に遭わせたでしょ?もうあんなのは嫌だからね」
更に相手を思い遣る素振りを見せれば完璧だ。
「あ、あれは・・・怖かったですけど、でも助けに来てもらいましたし・・・」
きぃきぃ騒いでたのも何処へやら。
真っ赤になりながら黎翔の腕に囲われていた夕鈴は、恥ずかしそうに俯いてしまった。
その様子にほくそ笑みながら、黎翔は抱きしめた腕に力を込める。
「君が心配する事なんか何もないよ。李順だって判ってる。―――だから、明日からもちゃんと政務室に来てね」
「・・・はい」

夕鈴を、一人で他の男の前に出すのが嫌だった。
以前より想いが深まった分、嫉妬心も重くなっているのだ。
確かに告げた理由も全くないわけではない。
だがそれはあくまでも建前であり、演技にかこつけて少々夕鈴といちゃつきたいだけだった。
途中方淵が来た事すら夕鈴は気付いていないだろう。
(何度か目を回しそうになってたけど・・・今度はもう少しいけるかな?)

黎翔の「地道に夕鈴の限界を探る」日々は未だ続いている。




***おしまい***



るる様ありがとうです!




SNS2014/02/16


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