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原作寄り
黎夕




お誕生日プレゼントにお送りしたお話と挿し絵のコラボです。




書き手→ぴいこ&るる
挿し絵→からあげ&ダリ子
(敬称略)

4人でコラボしました~


コラボ方法にもいろいろとありまして。

今回は、挿し絵担当が「なんとなく描きたい・こんな感じのお話を読みたい構図」を提出して

書き手さんが肉付け、分担してお話を書き上げるというものです(*´ω`*)


お誕生日の方が大ちゃんスキーさんなので、私はとにかく大ちゃんを描くぅ!と宣言して、素敵なシチュエーションを書き上げてもらいました~


あれ?
そういえばこのお話にはタイトルがなかったのかしら…←今更





では、どうぞ~


*-*-*-*-*




 甘過ぎる演技に耐え兼ねて夕鈴は、書簡を抱えて政務室を抜け出した。
 誰もいない書庫について、ようやくほっと一息つく。それから書簡を片付ける。ついでに、書簡の整理もしておく。片付けた時に、違う棚の書簡が紛れていたからというのもあるが、政務室に戻ったら先程の続きがまっているからだ。
「もうっ、なんであの人は平気であんな事・・・っ」
 つい思い出してぼふんっと顔が赤くなってしまったが、首を振ってなんとか気を取り直した。棚を念入りに確認し、幾つか間違えて入れられていた書簡を元の場所に戻す。
 その途中、違和感を覚えて夕鈴は屈んで棚を覗き込んだ。書簡が入った箱の奥に、書簡が落ちてしまっていたのだ。よく見てみると、書簡の他にも書類や何かの覚え書きのような紙切れが紛れていた。様々なところにあるそれらを、夕鈴は宝探しのような気分で全て探し出す。元に戻そうかと思ったのだが、しまい場所が分からないので、仕方なく机の上に並べておいた。後で、誰かに聞いて戻しておこうと考えたのだ。

 片付けを終えて満足そうに頷いた夕鈴は、改めて書庫の中を見回した。いつもは入り口すぐの棚くらいしか見ていなかったのだが、棚の更に奥にも空間がある事に初めて気がついた。この書庫は思ったよりも広い。
 夕鈴は、普段は足を踏み入れない奥へと向かった。

 埃と黴臭い臭いが鼻をつく。それに混じって食べ物の臭いがした。
(どうしてこんなところで?)
 夕鈴は、棚の陰に隠すように置かれていた食べ物の残骸を見つけた。そして、思った。
(きっと老師が隠れて食べているんだわ。陛下に報告しておかなくちゃ)
 それにしても、と夕鈴は部屋中を見回す。手入れされておらず、あちこちに蜘蛛の巣が貼られていて、なんとも掃除のしがいがありそうだ。夕鈴は、うずうずした。しかし、今は妃の衣装を着ている。汚したら怒られてしまうだろう。換気くらいなら、いいわよね?外はこんなにもいいお天気なんだし。夕鈴はそう思って窓を開けた。その途端に声がした。
「なにしてんノ?こんな所で」
 開けた窓から浩大が顔を出した。そのままするりと室内に入る。その軽やかな身のこなしに、夕鈴はしみじみと言った。
「流石ね。やっぱり私も浩大に護身術を習おうかしら」
「隠密みたいになりたいって話?」
「ええ」
「やめときなヨ。隙の無い妃なんて、囮になれないし」
 二人きりで護身術教えてたら俺の身が危ないし
「え?なに?」
「いや、なんでもない」
 浩大は、腕を頭の後ろで組むとにかっと笑った。
「それにさ、お妃ちゃんはもう充分優秀な隠密だと思うケド?」
「どういう意味?」
 首をかしげる夕鈴。浩大は、ゆっくりと窓辺に向かう。
「それじゃあ、一個だけ教えてあげるね。もうすぐここに陛下が来るよ」
「えぇ?!」
 慌てて耳をすますと、確かに近づいて来る沓音が聞こえる。途端に夕鈴は、おろおろと室内を当てもなく歩き始めた。その間に、浩大がひらりと窓枠に飛び乗ったのを見て、夕鈴はますます慌てた。先ほどの事もあるので、陛下と二人きりと言うのは少し恥ずかしい。
「浩大!どこに行くの?」
「屋根の上。ひなたぼっこが好きだからサ」
 ひらひらと手を振って浩大は、姿を消す。そこへ浩大が言った通り黎翔が現れた。

「こんな所にいたの?」
「・・・っ。へ、陛下・・・」
先刻までとは打って変わった小犬な雰囲気に、ほっと息を吐く。

夕鈴とて黎翔といるのが嫌な訳ではないのだ。
ただ恥ずかしくて、心臓に悪いだけ。
だから素である小犬の彼には、やはり安心してしまう。

「どうかされたんですか?あ、もしかして何か探し物でも?」
甘い演技はされたが、今日も政務室は慌しかった。
その中心である黎翔が出て来てしまって良いのだろうか。
そう思いつつ、とことこと近寄りながらした問い掛けに、彼はにっこりと笑った。
「ううん。書類を差し戻してて少し時間が空いたから、一緒に休憩でもどうかと思って」
「あ、そうなんですか」

甘すぎる狼陛下に一杯一杯になって逃げ出してしまったけど、黎翔はいつも自分を気遣ってくれる。
その優しさに胸がじぃんと熱くなり、夕鈴は頬を染めた。
「行こう?」
にこにこと笑われ、手を差し出されて。
このほんの僅かな憩いの時を、自分と過ごそうと思ってくれた黎翔に報いなければと気合いを入れる。
少しでも疲れが抜けるように、心が軽くなるように。

本来ならそれは本物の妃の役目だ。
心の底で囁く声は聞かないふりをして、夕鈴は黎翔に手を引かれ書庫から連れ出されたのだった。




供を断り、手を繋いで。
黎翔は夕鈴を庭の散歩へ誘った。
今日は天気も良く、時折吹く温かな風が心地良い。

以前の王宮ではあり得ない程の優しい時間。
木々に隠されて芽吹いた生命や、独りで居れば気付けないような小さな花。
それらは全て、夕鈴が教えてくれるものだった。

「ほら、見てください陛下。猩猩袴がもう咲いてますよ。まだ寒いと思っても、もう春が来るんですねえ」
「そうだね。夕鈴は春、好き?」
「はい。何たって水仕事が楽になりますし!それに色んな花が咲いていくのを見るのは楽しいです」
「そっか」
今日も元気な彼女の、他愛ない話に癒されてゆく。
こんなに普通の人として接してくれるのはたった一人だけ。
他の人間から見れば、自分は『冷酷非情の狼陛下』なのだから。

「季節の変わり目は体調を崩しやすいで すし、陛下も気を付けないと・・・」
「僕より君の方が気を付けてよ。まだ寒いのに、掃除行ってるんでしょ?」
「私はこれくらい平気ですよ!今までだって寒くてもちゃんと家事やってましたし。仕事なんですから当たり前です」
「ほんと、夕鈴は真面目だなあ」
あははと笑うと、彼女は「何でそこで笑うんですか」と不満を漏らした。
その姿すら可愛らしくて、くすくすと笑いながら宥める。

夕鈴は何も変わらない。
真面目な性格も予想外な行動も、初々しい反応も。
王宮と言う、ある意味一番深い闇を潜ませているここに居てすら、変わらず白く在り続ける。
この温かい陽射しのように。

「あ、そうだ。後で先刻の書庫を掃除してもいいですか?」
「書庫の?」
「はい。ちょっと奥を見たら随分埃が積もってて―――あまり頻繁に使われてはいないようですし、人に見られる前にささっと済ませますから」

確かに先刻夕鈴が居た書庫は、あまり使われていない。
だから掃除も行き届いていないのだろう。
経費節減の為に李順が削っているのかもしれない。

だが頻繁に使われていないからと言って、見られて良い物だけとは限らないのだ。
変なところばかり聡い夕鈴が心を痛めてしまうような物も、紛れ込んでいる。
「んー・・・」
つい立ち止まり返事を渋る黎翔に、夕鈴は可愛らしく首を傾げた。
こんな妙な心配をされているとは全く気付いていないのだろう。
きっと彼女は善意から言っただけなの だと判ってしまって、少し困る。

「気持ちは嬉しいんだけど―――いつ官吏が入って来るかも判らないし、重要な書簡が置いてある場合もあるから・・・」
苦笑しながら答えると、夕鈴ははっとしたように袖で口元を隠して俯いた。
「そ、そうですよね・・・すみません、余計な事を」
「ううん。今度李順に言ってちゃんとやらせておくから」
頭を撫でながら言っても彼女はしゅんとしたままで、堪らず抱き上げる。
「きゃ・・・っ」
途端に上る小さな悲鳴は聞き流し、真っ赤になってゆく様子には笑みを向けて。
体を強張らせてしまった温かな重みを抱き締めながら、黎翔は木々の隙間を通り抜けた。

「ちょ・・・どうしたんですか?急に」
未だ狼狽える彼女を連れて来たのは、今は人が入らない奥庭。
以前は政務に嫌気がさすと抜け出して休んでいた場所だ。
ここへ来るのも久し振りだった。

「こんな場所が・・・」
あまり気付かれない秘密の場所は、元気にあちらこちら散策している夕鈴も知らなかったのだろう。
少し驚いたようにきょろきょろと見回している様がまた愛らしい。

ここは木と池に囲まれ、周りからは見え難いのだ。
そのくせ背の高い木がある訳でもなく、良く陽が当たる。
だからこの季節は特に心地よい。

黎翔は小さく広がる下草の上に夕鈴を座らせ、自分も隣へ腰を下した。
きょとんとする彼女の肩へ手を置き、引き倒すように一緒に寝転がる。
「ぎゃっ!」
頭が当たらないように腕を回し、慌てて起き上がろうとする夕鈴を片手で制して。
「何するんですか!」
真っ赤になって文句を言う彼女を逃がさないよう囲い込む。

「ねえ、夕鈴。笑ってよ」
「・・・へっ?」
「君が真面目なのも働き者なのも知ってる。だから先刻みたいな事を言ってくれたんだって判ってるよ。気持ちは本当に嬉しかったんだ」
「―――」
「王宮はさ、やっぱりあまり公に出来ないものもあるよ。でも、だからって夕鈴を信用してないんじゃない」
「・・・はい」

そう。
夕鈴を信用していない訳ではない。
彼女が何かを知って、傷付くのが怖いだけ。
それに、自分に反発する連中が「夕鈴は何か情報を持っている」と考えたら― ――狙われるのは彼女なのだ。

自分が危険に晒されるのは良い。
慣れているし、今までやってきた事を考えれば自業自得だと納得もできる。
でも、優しい夕鈴が傷付くような事だけは許せない。

「だから、また何かあったら言って。ね?」
彼女と向き合いながら引き寄せて、額をこつんと合わせる。
一瞬で耳まで真っ赤になってしまうこの温もりを、何一つ損ないたくない。
「―――はい」
夕鈴は少しの間狼狽えていたが、やがてはっきりとそう答えた。
少し困ったように、でも笑っていてくれるのが嬉しい。


ぼっこ誕プレ_b


「何だかあったかくて眠くなっちゃうね」
敢えて話を変えると、夕鈴はおずおずと見上げてきた。
「陛下も 、ひなたぼっこ好きなんですか?」
「・・・も?」
「先刻浩大もそんな事を言ってたので」
「ふうん?うん、まあ好きかな」

どちらかと言うと、陽射しより君の方が温かく感じるけどね。

その思いは言葉にしない。
恥ずかしがりながらも折角抱き締めさせてくれているのに、変に意識されたら離れて行ってしまいそうだから。

本当に眠るつもりはなかった。
でも温もりが心地良くて、彼女が腕の中にいてくれる事に安心できて、自然と瞼が下りてゆく。

普通の夫婦なら、こんな事は些細な日常の風景なのだろう。
本来の自分には縁のない、でも大切な時間。
その幸せを噛み締めながら、ついうつらうつらと微睡んでゆく 。

「いつもお仕事、お疲れ様です」
黎翔が最後に聞いたのは、自分を労わる優しい声だった


 一方その頃。王宮の建物の影となり、昼間でも薄暗い場所に不穏な影があった。死角であり、回廊や中庭から見えることはないのに、それでも尚用心深くその男は辺りを見回している。その場に立ち止まるでは無く、そわそわと落ち着きがない様子は、誰かを探しているようだ。
 男は、小さく誰かを呼んだ。
「おい」
 いつもなら自分がここに到着すると、まるで予知していたかのように姿を現わす筈の仲間が、今日は現れない。男は少し苛立ちながら、先程よりもやや大きな声で言った。
「おい。何処だ?」
「何回呼んでも来ないヨ?」
 突然返事の代わりに、屋根の上から声がして、男は驚いて上を見上げた。
「お前は?!何故ここに?!」
 屋根から飛び降りた浩大は、余裕たっぷりに笑うと言った。
「あーあ。せっかくひなたぼっこしてたのに。アイツと二人でさ」
 男は、浩大が指差した方に目をやる。するとそこにはここで落ち合う筈だった仲間が手足を縛られた状態で伸びていた。

 先程、黎翔が夕鈴を連れ出した後、書庫に戻って浩大は官吏として忍び込んでいた男を捉えた。

 お妃ちゃんと鉢合わせしなくて良かったヨ。本当に

 浩大は、思い出しただけで肝が冷えた。王宮に何かが潜入している事は、以前から掴んでいた。粗方の予測もつき、後は決定的な証拠を掴むだけだ。相手も、こちらが感づいている事を察知したのだろう。ここ数日、水面下での動きが焦るように慌ただしく粗が見える様になっていた。だから、夕鈴の事はできるだけ黎翔のそばに置いておき、鼠を早急に捉えようとしていたのだ。

 なのに、じっとしてないのがお妃ちゃんらしいよナ。まあ、ついつい構い過ぎちゃうへーかもへーかだけど。

 夕鈴を側に置いて護ると言う大義名分がある為、いつも以上に構ってしまい、逃げられたのである。そして、進入した何者かの気配を察して兎を捕まえに来たのだった。

 緊迫した空気の中、なぜか楽しそうな浩大に、男は激昂した。
「何を笑っている!」
 男は懐から取り出した小刀を、浩大に向かって投げつける。
 浩大は地面を蹴り、軽やかに空を舞った。

ぼっこ誕プレ

 男の放った小刀は空を切り、虚しく地面に突き刺さる。それと同時に浩大の放った暗器が、男の着物を木に縫いとめるように刺さった。投げる動作さえも見えなかった男は、ほんの一瞬あっけにとられていたが、直ぐに我に返って仲間を呼ぶべく指笛を吹いた。

 しかし、浩大は動じない。男は、なかなか応じない仲間に焦ってさらに強く指笛を吹いた。
 その様子を見ていた浩大は、やや飽きれ顔で言う。
「だから。何回呼んでも来ないヨって、言ったダロ?」
「な?!」
 やれやれと溜息を吐く浩大に、男は全てを察した。今、既に仲間は捕縛されたか逃げてしまったのだろう。男は必死に応戦しようとするが、身動きが取れない。冷や汗が背中を伝った。

「相手が悪かったナ」

 次の瞬間、男は縄をかけられて地面に転がっていた。

 さて、どうすっかな?

 浩大は手をはたきながら辺りを見回した。
 賊は全て捉え、もう侵入者の気配はない。潜入していた男も、手引きしていた官吏も捉えた。
 そして奥庭からは、どこか甘ったるい気配。それを態々邪魔する必要はない。

 浩大は屋根に上がると、李順の元へと向かった。


(全く、いつまでバイトに構っているつもりか)
軽く苛立ちながら王宮の回廊を歩くのは李順である。

甘い演技に耐え切れず、政務室を逃げ出した妃。
その後を追った黎翔が、なかなか戻って来ないのだ。
刻々と溜まってゆく書簡に我慢の限界を超え、連れ戻すべく主を探していた。

王宮に潜入した賊を手掛かりに、反国王派の一味を捕まえるよう黎翔が指示を出したのは数日前。
それに合わせて、彼は夕鈴を後宮から出さないようにするつもりだった。
李順としては別に彼女が何処にいようと構わなかったが王の指示に従わない訳にもいかず、その判断を受け入れた。

だが情ない事に―――事情を全て話さず言い包めよう とした黎翔は、失敗したのだ。
天然で無防備なバイト妃にまんまとやり込められ、挙句に涙目で「政務室へ伺うのも私の仕事です!」と宣言され、黎翔は渋々彼女の王宮への出入りを認めた。

『忙しいから来るなとでも言えば済むものを・・・っ』
その時そうぼそりと呟いた李順に、からからと笑いながら答えたのは浩大である。
『そりゃ夜には会いたいんだからしょうがねえじゃん。忙しいって言ったらお妃ちゃんに追い返されるだろうしさ』

要するに、忙しいなら早く自室へ戻って少しでも体を休めろと言われてしまうらしい。
その心掛けは李順からすれば結構な事だと言える。
だが、その性格のせいで巡り巡ってこんな事になっているのだ。
黎翔は彼女の 身に危険が及ばないよう、常に手元へ置くと言い出したのだから。

(あの執着ぶりは―――本当に大丈夫なのか)
李順がそう危惧してしまうのも仕方のない話である。
その時。

「李順サーン」
屋根の上から明るい声が掛かり、李順はさりげなく周りを見回した。
恐らく機会を窺っていたのだろう。
周囲に人影はなく、溜息と共に返事をする。
「―――何かありましたか?」
「うん、例の賊を捕まえたから報告にね」
「そうですか、ご苦労様です。―――陛下へは?」
「んー?言ってないけど、多分判ってんじゃね?今は邪魔すると睨まれそうだしさ」

(睨まれる・・・?)
と、言う事は。
どうせ夕鈴を捕まえて構っているのだろう。黎翔は彼女を気に入りすぎているのだから。

「ところで、証拠は勿論手に入れたんですよね?それでなければ泳がしておいた意味がありません」
「あー、うん。お妃ちゃんがね」
「・・・は?何故そこに夕鈴殿が出てくるんです」
片眉を顰めた李順に、屋根から下りてきた浩大は楽しそうに説明を始めた。

黎翔の演技に耐え切れず逃げ込んだ書庫で、そこにしまわれている筈のない書簡を見つけて夕鈴が分別していた事。
その書庫は賊が潜んでいた場所で、食い散らかした跡があった事。
賊が戻る前に黎翔が夕鈴を迎えに来たので、分別されていた証拠を押さえ賊も全て捕らえた事。

「―――」
聞いていた李順は、暫く何も言えなかった。賊の潜入には気付いていたし泳がせていたが、奴らは転々と居場所を変えていたのだ。
この広い王宮内、潜んだネズミを探すのは容易ではない。
痕跡を辿り、居場所をつきとめた頃にはまた移動されてを繰り返していた。
だからこそ証拠も何処にあるのか判らず、少々梃子摺っていたのに。

(偶然とは言え、夕鈴殿が全て見つけるとは・・・)
勿論彼女は何も気付いていないだろう。
知らせないように黎翔も浩大も最大限の配慮をしていたのだから。

「やー、お妃ちゃんには参ったよ。さすが狼陛下の花嫁だよな~」
にやにや笑う浩大に、李順はまた溜息を吐いた。
「・・・今回は夕鈴殿のお陰で解決した、と言う事ですか」
ただの偶然だとしても。
李 順とてそれを評価する気持ちが無いほど、心が狭いつもりはない。

「ですが」
「ん・・・―――っ!?」
低くなった声に浩大は李順を見やり―――その形相に顔を引き攣らせた。
「だからって、陛下がサボる理由にはなりませんよねえ・・・?」
「えっ、ちょっと、李順サン?」

浩大が捕り物を終え報告に来たと言う事は、黎翔が夕鈴を捕まえてから時間が経っていると言う事である。
そして、黎翔に報告しなくても判っているであろうと言う事は、もう夕鈴の身は安全だと知っていると言う事。
それなのに、一向に戻って来る気配がないのだ。
仕事は溜まる一方だと言うのに。

「それで、陛下はどちらにいらっしゃるんでしょうねえ・・ ・?貴方、知ってるんじゃありませんか?」
「え、いや―――どこかなあ・・・アハハ」
笑ってはいるものの、どす黒い気配を纏わり付かせた鬼の側近に、浩大は顔をひくつかせるばかり。
(やべえ。邪魔したら陛下に切り殺されそうだし、言わなきゃ李順サンに呪い殺されそう・・・)
どちらが良いか天秤にかけるまでもなく、どっちも嫌に決まっている。

と、なれば。
(逃げるが勝ち、ってね!)
徐に後ずさり屋根へ登った浩大を追いかける声の迫力も、今は気付かぬふりをしなければならない。
「浩大!?陛下は何処なんですかっ!!!」
「さ~?ま、もうちょっとしたら戻ってくんじゃね?」
その『ちょっと』がどれくらいかは黎翔次第だが。

「陛 下――――――――!?!!!」
側近の叫びを後に、浩大はそそくさと賊を尋問すべく牢へ向かったのだった。


*-*-*-*-*(おしまい)*-*-*-*-*


改めまして

お誕生日おめでとうございます!


Hなたぼっこ様へ捧ぐ

2015/03/27






コメント

Hなたぼっこさまへ

おお、おひさしぶりー。
そんな、まぁ、改めて……
照れますなぁ( ̄▽ ̄)←

とりあえずまた飲みに行こうよ←ホントそれしかないのかwww
  • [2015/11/16 22:47]
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  • ダリ子(拍手コメ)
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