これもお誕生日プレゼント 

原作寄り
黎夕





こちらもSNS白友さまのお誕生日にお贈りしたものです。


るるさんがお話を書いて、私とからあげさんとで挿し絵つけました。


コラボプレゼントです(*´ω`*)



日頃オツカレの白友さまの
少しでも疲れた心の癒しになれば、と想いをこめて。



お誕生日おめでとうですー

ボロさま!(*^▽^*)





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夕鈴はその日も立入禁止区域の掃除に精を出していた。

最近黎翔の仕事が忙しく、後宮に戻って来ないのである。
それはもう随分と続いているのに一向に軽減されていないようで、とうとう政務室への出入り禁止を李順に言い渡されたのが二日前。
夕鈴は床を磨いていた手を止め、ふうと息を吐いた。

彼はちゃんと休んでいるのだろうか。
平気な顔で無理をする人だから不安になる。

無心で掃除をしているつもりでも、気付くといつも彼の事を考えてしまっていて。
何が原因でそんなに忙しいのかとか、いつまで続くのかとか。
それは自分が聞いて良い事ではないと判っている。
でも。

「―――会いたいなあ・・・」
そうぽつりと呟いた時、浩大が李順の呼び出しを伝えに来たのだった。




数日後。
まだ終わりの見えない仕事の山に、黎翔は溜息を吐いていた。
後宮へ戻れない程忙殺され始めてから、もう随分経つ。
面倒な事は重なると良く言うが、今回は正にそれだった。

減ってきたとは言えまだなくならない横領。
季節外れの嵐。
早過ぎる冷害の報告すら上がって来ている。

だからと言って毎日の通常業務がなくなる訳ではなく、ただ増えてゆくだけ。
一区切りできそうな気配さえ全くないのだ。
溜息の一つも出ると言うものである。

「うひょー。ここ最近は本当に凄い事になってんね~」
不意に聞こえた場違いな明るい声にも、驚く事はない。
いつもより少々早いが、毎日なのだから。

「―――夕鈴は?」
「もう寝ちゃったよ。毎日動いてるから疲れたんじゃね?」
「・・・そうか」

もう何日顔も見ていないだろう。
政務室へも呼べなくなってから既に数日経っているのだ。
浩大からの報告で掃除を頑張っていると聞いていたが、黎翔にとっては会えないのが一番きつかった。
心に溜まる疲れが、重く圧し掛かる。

「―――元気なの?」
「元気元気!快食快眠、健康そのものだよ」
「・・・そう」
夕鈴が元気に過ごしているなら良い。
黎翔は浩大に酒瓶を放り投げると、また筆を走らせ始めた。
「おっ、これいい酒じゃん!らっきー」
「老師に、あまり無理はさせないよう言っておけ。それと、滋養のある食事を。彼女は自分の健康に自信を持ち過ぎているからな」
「は~い」

(自分もそうだって気付いてんのかな、この人)
確かに黎翔は体力もあるし、本人がその気になれば我慢強い。
だが人間である事に変わりはないのだ。
だからどちらかと言えば黎翔こそ休憩を入れるべきなのだが。
(―――これじゃそうも言ってらんないか)
机の上だけではなく、周りを埋め尽くしそうな勢いで置かれている書簡の数をみれば、無理だろうと思った。
結構頻繁に忙しくしているが、今回はいつもより大分酷いらしい。

「で、何時頃落ち着くの?」
「・・・さてな」
そんなものは黎翔の方が聞きたいくらいだ。
先が見えればまだ我慢のしようもあると言うのに。

(ゆーりんに会いたいなあ・・・)
きっと顔を見るだけでも違うのに、今は後宮に足を向ける暇さえないのだ。
急ぎではないのならこっそり抜け出す事も考えるが―――災害は待ってくれない。
だから結構真面目に仕事をしている。
それに。
こんな状況で会いに行ったと知れれば、彼女に怒られてしまう。
側近と違い、仕事をしろとは言わないかもしれないが。
『もうっ!お疲れなんですから、ちゃんと部屋で休んでくださいよ!』
真っ赤な顔でそう言う夕鈴がありありと想像できて、内心苦笑が漏れた。

(少しは寂しいと思ってくれてるかな・・・)
いや、元気にしていると聞いたばかりなのだ。
それはないだろう。
それに、別に悲しませたいのではない。
だから、元気でいてくれるのが何より嬉しいのだが。
(・・・ゆーりん・・・)
自分の半分でもいいから、思っててくれないかな。
そう考えつつ目の前にある仕事の山に、黎翔はまた溜息を吐いたのだった。




それから三日程経った深夜。
黎翔は後宮へ足を向けた。
ほんの僅かではあるが、仕事が落ち着き始めて来たからだ。

妃が寝入った後訪れるのは、実は初めてではない。
侍女らは口止めせずとももう判っている。
黎翔を見ただけで礼を取り、音もなく下がって行った。

そのまま寝所へ入り、寝台の端に腰掛ける。
夕鈴は寝てしまうと少しの物音では目を覚まさない。
だから―――髪を一房掬い取り、弄ぶ。

すやすやと規則正しい寝息に、心に溜まった疲れが少しずつ癒されてゆく気がした。
彼女はとても気持ち良さそうに眠っていて、柔らかい笑みが浮かぶ。

―――本当は、ここまで自分が忙しいのなら里帰りをさせてやっても良いのだ。
夕鈴は何も言わないが、弟に会いたいだろう。
もう随分帰していないのだから。
ただ後宮で待っているふりをするだけなど、夕鈴には苦痛に違いない。
そう判ってはいても、やっぱり自分の世界ではない所に一人で行かせる気にはなれなくて。
下町にいた方が自由に過ごせる筈だ。
そう知っていても、遠くに行って欲しくなくて。
「―――ごめんね」
そう呟いて、黎翔は弄んでいた髪に口付けた。

誕生日B1






それから毎晩のように黎翔は夕鈴の寝顔を見に行くようになった。
本当はちゃんと起きている時に会いたい。
でもそんな我侭で彼女に無理をさせたくなくて。
仕事熱心な夕鈴は、きっと待っていて欲しいと頼めば聞き入れてしまうからこそ言えなかった。

安らかな寝顔を見るだけでも凝り固まった心が解れて行くような気がする。
それは長い時間ではないが、とても落ち着く大切な一時になっていった。

浩大から報告を聞き、ほんの少しの間だけ夕鈴を見る。
たったそれだけの関わりで疲れを癒す日がまた少し過ぎた頃。
やっと一区切り出来そうな気配を感じられた。
その話が出たのはそんな時だった。

「南の州から長官が王都に来ていますよ。陛下に是非ご挨拶をと申し入れがありましたが・・・」
黎翔同様僅かに疲れを見せ始めていた李順に言われ、つい眉間に皺が寄る。
「―――それは例の?」
「はい。ご息女もいらっしゃっているようですし、痺れを切らしたのでしょう」

遠く南に位置する州の長官から、娘を是非後宮へと言われ続けてもう随分経つ。
即座に断っているにも関わらず、なかなか諦めないのだ。
王都や周辺の州では唯一の妃への寵愛は既にかなり有名で縁談もあまり来なくなっていたのに、さすが遠方と言うべきか。
どうも噂の信憑性を感じ取れないらしい。

「断れ」
勿論そんな娘に会うつもりはない。
一言で切り捨てると、李順は珍しく意見をしてきた。
縁談を断る事に関してはどちらも同じ考えである筈なのに。
「噂に信憑性がないと言うなら、本人から広めさせては如何ですか?」
「―――どう言う事だ」
「ご寵愛ぶりを見せ付ければ良いのです。あの州は長官が絶大な力を持っていますからね。そのご本人から言えば他の者も納得するしかないでしょう」

確かに李順の言う事は一理ある。
だが夕鈴をあまり巻き込みたくないのだ。
いちゃいちゃするのは勿論楽しいのだが。

返事を渋っていると、李順は眼鏡の位置を直しながら昏い笑みを零した。
「随分日も経ちましたし、丁度良い頃合です」
「―――?」
「いえ・・・彼女も仕事が出来なくて心苦しいのでは?そろそろびしっと仕事をさせてやるのも思い遣りと言うものです」
その言葉に、ほんの少し心を動かされる。
―――理由が何であれ、会いたい気持ちに変わりはないのだ。

縁談を断る場など夕鈴は居心地が悪いだろう。
でも、表情豊かな彼女の様子を感じたくて。
もしかしたら傷付けてしまうかもしれない。
でも、触れたくて。

「―――任せる」
「御意」
心に疲れの溜まり切った黎翔は、誘惑に勝てなかった。




その日の夕刻。
小さめの謁見の間に、その長官は娘を伴って入って来た。
さすがに未だ後宮入りを諦めていないだけあって神経は太いようである。
冷気を乗せた威圧にも僅かに青褪めただけで挨拶をし始めた。
娘の紹介と自慢も忘れない。
「我が娘は幼い頃より陛下一筋でございまして。まだ王位に就かれる前から恋焦がれておりました。この度はこのような機会を設けて頂き、喜びに打ち震えております」
そうは言われても娘は黎翔の放つ雰囲気に震えているとしか見えない。
それでも許してもいないのにちらちらと視線を寄越す様に、苛立ちが募ってゆく。
(下らない茶番だ。やはりこんな事に夕鈴を巻き込むべきではなかった)
―――確かに見た目は美しいのだろう。
だが心に響くものなど何一つなかった。
ただ煩わしいだけ。
ここにいるのがもし夕鈴なら、考えを曲げても手を伸ばしてしまうかもしれないのに。
(いや、彼女ならば父親が言っても素直にこんな所へ連れて来られはしないか)
そう考え、ついくすりと笑いが漏れる。
何を勘違いしたのか、長官とその娘が嬉しそうな顔をした時。
しゃらんと涼やかな音が響いた。

李順の手配なのだろう。
夕鈴は艶やかな髪を強調するように、簪も煌びやかな姿をしていた。
衣装もいつもとは違い、派手ではないもののすっきりとした姿勢が際経つ淑やかさを表したものを身に付けている。
普段元気な夕鈴を見慣れている黎翔からすれば、つい目を見開いてしまう程―――妃らしく美しい。

「―――こちらへ」
何だか彼女らしくなく見えて、黎翔はもどかしく手を差し出した。
いつもならただ美しいと見惚れていただろう。
でもここの所ずっと寝顔しか見れなかった黎翔からすれば、やはり少し不満で。
もっと可愛い顔が見たい。
つんと作った美しさではなく、夕鈴本来の内から溢れるような可憐さが見たい。
そう思ってしまったから。

夕鈴は衣装や装飾品に気を遣うようにしずしずと近付いて来た。
長官は礼を取りながらも賞賛の眼差しを向け、娘は不満も露に夕鈴を睨みつけている。
黎翔は夕鈴の指先が届く直前に更に手を伸ばし手首を握り締めると、強く引き寄せた。
「きゃ・・・っ」
倒れ込んできた彼女をしっかり抱き込み、耳に唇を寄せる。

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「美しいが―――その姿は誰にも見せたくないな。他の者をも惑わすなど、我が妃は意地が悪い」
「な、何を・・・」
そのまま耳に口付けると、夕鈴は真っ赤になってしまった。
そのいつもの様子に心からの笑みが浮かぶ。
「忙しさのせいで会いに行けなかったのを怒っているのか?私がいなくて―――寂しかったか」
妃だけに見せる顔を向けながら、額へ頬へと口付ける。
夕鈴はぴくりと肩を震わせ、周りから見えないようぎゅーぎゅー押し返しながら、小さな声で反論した。
「ちょ、陛下、やりすぎですっ!ちゃんと長官に挨拶しろって李順さんに言われてるのに・・・っ」
それには答えず、夕鈴の顎に指を掛けて顔を上げさせる。
「怒った様も愛らしいな。それが私を求めてのものなら尚更だ。だがその姿を見るのは私だけで良い」
じっと眼を見詰めながら言うと、夕鈴はへにゃりと黎翔に凭れ掛かってきた。
どうやら限界だったようだ。

いつも通りの夕鈴に満足し、片手で抱き上げる。
自分の肩に顔を埋めるよう位置を直し抱き締めると、黎翔は周りにも聞こえるようにはっきりと言った。
「もう挨拶もいいだろう。これより先は夫婦の時間だ」
反論したそうな長官親子と溜息を吐く李順を残し、黎翔はそのまま後宮へ向かったのだった。




力が入り過ぎないよう大切に夕鈴を抱き締めて。
気を遣った侍女が部屋の前でにこやかに礼を取るのを目の端で捉えながら、長椅子に夕鈴を座らせ自分も隣に腰掛ける。
いつも通りの可愛らしい表情に、少々大人びた装い。
それは黎翔にとっては目の毒だった。
「もっ、もうっ!結局ご挨拶できなかったじゃないですか!縁談避けだから失敗するなって釘刺されてたのにっ!」
「うん、縁談避けだからこそ仲良しな所見せ付ければいいんだし大丈夫だよ。それより・・・夕鈴、凄くきれいでどきどきしちゃった」
「きれ・・・っ!」
きゃんきゃんと文句を言っていた夕鈴が言葉を詰まらせ大人しくなる。
いつも可愛らしいとは思っているが、こんなに綺麗になってしまうなんて反則だ。
でも。
「綺麗だけど、ちょっと心臓に悪いかな・・・」
「なっ!どう言う意味ですか!」
困ったように言うと、彼女は少し怒ってしまった。
何を勘違いしたのかは判らないが、あまり良くは受け取ってくれなかったようである。
「せっかく特訓し・・・あっ」
「・・・特訓?」

言い渋る夕鈴を上手く口車に乗せて聞きだしてみれば。
黎翔が忙しくなってから、李順の指示で妃教育を詰め込まれていたと言う。
あの長官が挨拶をしたがっていたのは元々知っていたし、なかなか諦めないのも判っていた。
だから最終的にこうなると、李順は予想していたのだろう。
最初の内は浩大の言っていたように掃除を頑張っていたらしいが、政務室へ呼べなくなった後辺りから特訓していたらしい。

結局挨拶をする間もなく連れ出されてしまってどうしよう。
そう呟く夕鈴を目の前に、黎翔はどこか擽ったい嬉しさを噛み締めていた。

人間など、仕事をすれば当然それを評価してもらおうと、言葉で態度で表してくる。
それが当たり前だと判っているし誇張されても正しく見極めてきたつもりだ。
でも夕鈴は、きっと黎翔が気付かなければ敢えて誇示して来なかっただろう。
確かに彼女にとって妃演技は仕事である筈なのに。

―――それは、思い遣りだ。
見返りも求めず、自分の為に頑張ってくれたのだ。
最近忙しくしていると聞いて自分こそが思い遣っているつもりになっていたのに、夕鈴は何も言わず頑張ってくれていたのだ。
それが、何だか嬉しかった。

「本当に君には敵わない」
そう言い、強く引き寄せ抱き締める。
と。
「い・・・っ!」
途端に小さな悲鳴が聞こえて来た。
「え、どうしたの?」
いつもぎゅうぎゅう抱き締めてもこんな声は出さないのにと訝しみ、夕鈴の顔を覗き込むと、そこには何かに耐えるような引き攣った顔。
「ごめん、どっか痛めた!?」
ちょっと強引に引き寄せたのがいけなかったのか。
心配して狼狽えた黎翔に、夕鈴は慌てて否定した。
「ち、違うんです!これは・・・え、と・・・」
そう言い最後には恥ずかしそうに俯いてしまう。
心配しつつも不思議そうに片眉を顰めていると、彼女はもじもじとしつつ小さな声で理由を教えてくれた。
「ふ・・・普段気にしない所に力が入ったりするので、その・・・」
「・・・うん?」
「き・・・筋肉痛が・・・」
「―――」
何とも情けない顔で言い出した夕鈴に、つい呆然とする。

「・・・ぷっ」
「ぷ?」
「あ、ごめん・・・ぷぷっ」
「ちょ、笑わなくてもいいじゃないですかっ!」
彼女はぷりぷり怒ってしまったが、黎翔はどうにも笑いが止まらなかった。
いつもよりお淑やかにしていた筈なのに筋肉痛になってしまった夕鈴が面白くて。
そして、そこまで頑張ってくれたのが嬉しくて。
「もうっ!」
「ごめんってば。そんなに怒らないで」
ぷいっと顔を背けてしまった彼女の頭を撫でて、どこも痛まないよう丁寧に膝に乗せて。
「どこが痛いの?揉んであげようか」
「・・・っ、け、結構ですっ!」
「遠慮しなくていいのに」
「陛下の方が疲れてるのに、バイトにそんな気遣わないで下さいよ!」
尚もくすくすと笑いながら、黎翔はそっと夕鈴を抱き締めた。
「ひゃっ」
「確かにちょっと忙しかったけど―――もう大丈夫」

元気と聞いた時は少しくらい寂しがって欲しいと思ってしまったけど。
やっぱり夕鈴は夕鈴らしいのがいい。

「君が元気だと、僕の疲れもどっか行っちゃうみたいだ」
「何訳の判らない事言ってんですか!疲れてるなら、今日は早めに休んだ方がいいですって!」
「えー?でも僕の元気の元は君だから、まだ嫌」
「だっ、だから意味が判りませんってば!」
顔を真っ赤にして寝かし付けようとする夕鈴を、黎翔は嬉しそうに宥め続けたのだった。

誕生日B2



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2014/11/02 HappyBirthday!

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