蓮の花と 

夏になると描きたくなる水と戯れるご夫婦…

「このご夫婦どこで何やってらっしゃるの」シリーズです。


どうしてこうなったのかは追求してはいけませんwww

ブログタイトルバック絵やサークルカットに一部加工して使用してます。


いつも、通販してくださった方々へ送付状的なメッセージカードを用意しているのですが。

今回、この絵をポストカードにして送らせていただこうかと企んでまして~。

良かったら貰ってやってください。
(弱気)

イベント頒布ではいちいち「要ります?」とか伺うのも「いや、いらない」と言われるのもココロが疲れますので←
有無を言わさず新刊には挟ませていただこうとも企んでます…

良かったら貰ってやってください。
(弱気な二度目)



0816
SNS2016/07/08





次の〆切がもうすぐとか…

全然オタ活時間が取れないから原稿できない、イベント準備も出来ないとか…

娘っこが幼稚園から持って帰ってきた朝顔が全く育たないとか…←

そんな幸せなw悩みを抱えつつ、毎日を過ごしております~。


朝顔って、放っておいてもにょきにょき伸びるものだと思ってました…

いや、ちゃんとお世話してるんです…

娘と一緒に、ちゃんとしてたんです…

なのに、持って帰ってきた時からそれこそ時が止まったかのように双葉のままなんです←


育ちが悪い、とか花が咲かない、というレベルじゃなくて。



・・・見た目、枯れてはないんだけどな…

そんなことってあるんですかね?(誰か教えて…w)

お友達のところは既に開花してるようで…愕然としました。


母が育児をおざなりにしてオタ活ばっかりしてる仕打ちですかね!?←


毎日、成長しない朝顔の成長観察してる娘っこが不憫で…orz


今から新しい種植えても遅いかしら…(*´Д`)


・・・と、朝顔の話は置いといて(´ー`)




ポスカ用に描いた絵に、葵@ゆぇさまが素敵なお話書いてくださいましたので、強奪してきましたー(*^▽^*)

どうしてこうなったかは追求してはいけません!wが、素敵すぎるシチュを紡ぎあげてくださいました♪


イチャイチャご夫婦をご堪能下さいませ~







【蓮の花と】

後宮の庭の一廓にある小さな池。
いや、池ともいえぬほどに浅い水辺。

「陛下!水が冷たいですっ」

そっと足を差し入れている夕鈴を黎翔はにこやかに見つめていた。
夏日が続くその日、涼を求めて二人は散策へと出ていた。
その途中にあった蓮の花の咲く池。
そこはきちんと整備されており、サラサラと澄んだ水が溜まっていた。

『ちょっと足をつけてみていいでしょうか…』

上目づかいで聞いてきた愛しい妃の望みを黎翔は即受け入れた。
普通の妃ならば決してしないようなその行為。

――夕鈴らしいなぁ

ニコニコと黎翔は水辺ではしゃぐ夕鈴を見ていた。

が。

夕鈴の足がつるりと滑る。
その身体が徐々に傾いて。

「――っきゃ!?」

体勢をどうにか立て直そうと夕鈴は頑張ってみるものの
滑ってしまった足では踏ん張りがきかない。

「夕鈴っ!!」

慌てて黎翔がその身体を抱き留めようとするが
その身体を抱いたまま、二人は池へと倒れてしまう。

ぱしゃーーん

水飛沫が上がり、二人は池の中で横になってしまった。
服も髪もびしょびしょで。
ぴたりと服が体へとくっついてしまう。
それがなんだか可笑しくて。

「ふふっ…」

「くくっ…」

二人は笑いだしてしまった。
びしょ濡れで笑う二人。
端から見たら『この暑さで頭が茹で上がってしまったのか』と心配されるだろう。

「あー…可笑しい」

「本当だね。ね、ちょっとこうして横になってようか。凄く涼しい」

「はい…黎翔様」

二人は手を取り空を仰ぐ。
雲のほとんどないその空は青く広がっていて。
そこに二人しかいない感覚に包まれる。

「暑い日も…良いものですね」

「そうだな、夕鈴…」

水面が反射してきらきらと二人を包む。
揺らめく水に夕鈴の長い髪がゆらゆらと揺れ動き。

「夕鈴。君は水の精か何かなのか…?」

「何を…?」

「髪が踊り、滴が君を輝かせる…。
 このまま離しては何処かへ行ってしまうのではないかと
 そう思ってしまうな…」

「もうっ///」

夕鈴はそっと黎翔の指に自分のを絡めて。

「何処にも行きませんよ。
 私は貴方の側に…ちゃんとここに居ますよ」

「そうだね…ずっと側にいてくれるか」

「はい…///」

そっと口づけを交わして。

「そろそろ行こうか。
 あまり長い間浸かっていたら風邪を引いてしまうかもしれない」

「そう…ですね」

そう言って黎翔は夕鈴を抱き上げて池から出る。
ぽたぽたとあちこちから水滴がしたたり落ちて、地を濡らす。
暑い日差しは水滴の跡を直ぐに乾かして、痕跡を消していった。

女官達は既に大判の巾を用意しており、二人を包んだ。

水面は先ほどまでの波紋が嘘のように凪いでいて。
楽しい一時など無かったかのように静まっていた。

だが、その記憶は二人の中に確かに残っていて。
ただ、全てを蓮の花が見ていた。

そんな暑い、夏の日の一幕。




*-*-*-*-*

葵@ゆぇさま、ありがとうございました~(≧▽≦)

まったくけしからんご夫婦・・・っ

末永くイチャイチャしててくださいましっ





そしてここのところ朝顔に気を取られ過ぎて←
拍手絵を朝顔と浴衣夕鈴さんに更新しました。


密かにホワホワしてますの。。。

息抜き、だいじ…(言い訳)

原稿やらねば!←

浩大暴走時代の果てに 

こんにちはです~!
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

私はパートに出始めて約1ヶ月が経ちました。
まかされる仕事も増えてきて、順調に労働してますv

何より元々親の参加行事が多い幼稚園なうえに二人分別々のスケジュールを抱えた主婦に優しい、出勤日を自由に調整していただける会社ですので感謝してもしきれないです。

よくこんなの雇ってくれたなぁ(笑)

という事で、仕事の合間に春の参観や遠足やお誕生日会やらと、更に夏インテに向けて更に更に秋のアレコレに向けて準備準備、の毎日忙しい日々を送っております~。



ので、猫耳本、到着の連絡や感想をチラホラいただいておりますがお返事滞っておりまして…すみませんm(__)m

ものすごく時間差で、え、いつの話か!ってくらい忘れた頃にお礼のメッセージ届いたりするかも知れないのでご注意くださいwww

今のところ、いただいたご注文分で入金確認が取れた方々への発送は全て終わりました~。

おひとりだけ注文内容確認のご連絡させていただいてますー。

もしなんのレスポンスもないがな!って方がいらっしゃったらご一報くださいっm(__)m






では今日は、4月にお誕生日だった大ちゃんスキーな白友さまへお贈りした大ちゃんの絵を持ってきましたー。

SNSにUPする時に、いつも日記タイトルに悩むのですが…

ベストセラー本になりそうな書名タイトルを勝手に作ってくれる「書名メーカー」で【浩大】で作ってみましたw

■ 浩大暴走時代の果てに 2刷 3000部発行(推定)
■ 浩大はもっと評価されるべき 78部発行(電子出版)(推定)
■ 浩大はどこへ向かっているのか 初版 4000部発行(推定)
■ 社会に出る前に知っておくべき浩大のこと 初版 6000部発行(推定)
■ 浩大のススメ 初版 2000部発行(推定)

どれも捨てがたい、というお話…(そう?w





■ 浩大暴走時代の果てに
が、一番それっぽいかなぁ?と勝手に想像

0403.jpg
SNS2016/04/04




そしたらこの絵からぴいこさまがお話書いてくださいました~(∩´∀`)∩
例の如く強奪して参りましたヨ♪


いつもありがとうございま~す(^_-)-☆






【浩大暴走時代の果てに】

 
浩大は間髪を容れずに聞き返した。
話が聞こえなかった訳ではない。その内容を信じたくなかったからだ。
言葉は、ただ、浩大にとって耳障りなだけだ。

だが、仲間は聞きたくもない話を繰り返した。
「陛下とお妃様が襲撃を受け死……」

浩大は、壁を叩いて仲間を黙らせた。そんな話は聞きたくもない。拳が痺れる。今の一撃で負傷したのかもしれないが、痛みなど感じなかった。

国内に怪しげな動きがある事は、知っていた。浩大はその動きを見張っていた。黒幕のおおよその目星はついた。王宮にも、幾人か仲間が潜り込んでいる事も分かった。本拠地も探り当てた。夕鈴を危険から遠ざける為、視察と称して安全な離宮へと移す手筈になっていた。敵の視線がそちらに向いているうちに浩大がすべてを終わらせる筈だった。

その筈だったのに。

「おいっ!どこへ行く?!」

浩大は仲間の制止も聞かずに飛び出した。向かう場所は一つしかない。

この場合、定石は王宮に戻って情報収集と、次の指示を受ける事だろう。しかし、浩大には真っ平御免だった。

「道具だって、使い手を選ぶんだヨ」

誰にでもなくそう言い、鞭を振るう。突然の襲来に、戸惑う刺客の動きなど、浩大にとっては取るに足らない。

へーかがいたらやり過ぎだって止めるカナ。いや、あの人なら加勢するか

そんな事を思い、笑みを浮かべる浩大の鞭は的確に刺客を捉えていく。

「ひいっ」
残虐とも言えるその攻撃と不釣り合いな笑みの異様さに、刺客の口から悲鳴が漏れる。
刹那の絶望の末、屋内に立って居るのは浩大だけになっていた。足元には躯が無残に転がっている。

「く、くくく……」
浩大は汚れた手で顔を覆う。堪えようとしても、堪えきれず乾いた笑が響き渡る。
「あはははははははっ!」

今更役目を果たしてももう遅いのだ。

壊れちまった道具を、いったい誰が使ってくれるって言うんだヨ

 一人二人は残しておいて、口を割らせる。そんな事、もうどうでもよかった。

「ははは……。あーあ。おっかしーの」

狼陛下の死。

受け入れられないその事実。夢中になっていたものがなくなり、改めて現実が重くのしかかる。

「アンタは、殺しても死なないと思ってたヨ」
「誰の事だ?」
「へ?」

浩大が振り返ると、そこには黎翔が立っていた。

「ずいぶん派手に暴れたな」
「へーか……。無事だったんだ……」
「悪いか?」
「いや……」
浩大が立ち尽くしている間に、黎翔は屋内を軽く見回した。
「全滅か。これでは口を割らせる事が出来ないではないか。夕鈴に私の敵が減らないと怒られるぞ」
「あー、そーだよな」

思考が追いつかず、ただ頭を掻きながら相槌を打つ浩大に、黎翔は不敵な笑みを向ける。

「まあ、私は一向に構わんが」

やっぱりへーかってそーゆー人だよネ

浩大は嬉しそうに笑った。




*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*







…陛下、生きてた!w

そりゃそうですよねっ
良かった~~~~~(*´Д`)


ちなみにこの絵このお話から発展して何故か前回の「厨二な大ちゃん」が出来上がったという謎の流れがあったりしますw

大ちゃん、弄んでごめんね…!←




ぴいこさま、ありがとうございました…!




そして相も変わらずむちゃぶりダリ子健在ですので、また強奪して参りますね←

厨二な大ちゃん 

ひょんなところから←

厨二な大ちゃんを描きました…





※浩大
※現パロ
※厨二すぎる


おふざけネタです!




そんな厨二な雰囲気に反応してくださった方が、厨二真っ盛り(爆)なお話書いてくださいました!!!

良かったら、素敵な厨二世界をご堪能くださいませwww












0412.jpg
※バイクはフリー素材をお借りしました。
(盗んでないYO!←)





-俺 浩大-



…ムカつく… 何がとか誰がとか、そんなんじゃなくて…ただただ全てが面白くなくて、自分を持て余していた。

つるんでる奴らがバイクは面白いって言うから乗ってみた。
もちろん直管バックファイヤーヤンキーホーン装備。
…確かに、風を切って走る爽快感とか認識できない景色の流れとかスカッとする部分も在るが…付随するアレコレが面倒くせー。
やれ、スピード違反だとか爆音で不眠症になっただの…イラつく。
しかも、俺達に喧嘩をふっかけて来る奴らまで出て来始めたのでしょうがなく…本当にしょうがなく相手をしてやる。
…金属バットにメリケンサックを装備して…バタフライナイフは…ちょっと迷ってポケットへ。

はてさて、今日の相手はどんなんだろうなぁ…少しは楽しいと良いんだけどな…。
など、取り止めの無い事を考えながらバイクを停める。

バットを担いで気怠い態度で前に出て…「-俺の相手は誰?」と投げ掛ける。

 ザリっと砂利を踏み締めた音がすると同時に空を斬る風圧を感じて、反射的に避けた。
「…第一段階クリア…」声と同時に次々と繰り出される攻撃に対応しているだけじゃあ後手に回る。
一旦、距離を取る為に大きく足を回す。
相手との距離が取られた事で、ソイツの顔が鮮明に見えた。
 …良かった。今日は楽しめる。
そう思うと同時に腰を落とし、攻撃態勢に入る俺の気分は最高に上がっていた。

 -この全てにムカつく気持ちが、反抗期なのか成長期なのかは知らないが…何時かは落ち着く時が来るのかな…その時には俺はどうなってんだろうな…

まだまだ暗闇でジタバタと抗う日常に終わりは来ないらしい。

 …ああ…イラつく。







---------------------------------------

大ちゃーーーーーーーーーーーーーーん!!!

うははははは!!!!(≧▽≦)

行さま、ありがとうございました!!!!!
素敵厨二…!!!!!←

厨二と闇とキワモノを語らせたら右に出る者はいないと言われている行さま!(そうなの?←

素敵な厨二大ちゃんをありがとうございました♪


随分前にいただいておりましたが、例によって、懐であたためすぎてごめんなさい…

決して出し惜しみしてるわけでは…←


でへへ( *´艸`)


そんな行さまから、拍手カウントでキリ良い数字パチパチしてくださって、これまた素敵な厨二リクエストいただいておりますwww

いま描いてるのでもうしばらくお待ちくださいーっ

厨二すぎて楽しい…←





拍手数とか訪問カウント数とかキリよさそうな数字は自己申告制で受け付けておりますよ~(∩´∀`)∩

リクエスト受けるかどうかは気分次第ですが←ここ重要w



もうそろそろ訪問カウント数がよんまんに到達しそうです~

いつもありがとうございます!






バレンタイン2016 



バレンタインと言えば現パロを描きたくなる今日この頃~♪


思えば2年前、初めて黎夕で漫画に挑戦したのがバレンタインネタでした。

4コマでしたが。


当時のお絵描きソフトは、ペンタブと抱き合わせの体験版だったので、書きだせるサイズに限界があったのですよ。

4コマを画面上で見やすいサイズにするには、ちょっと縦が足りない状態…


苦肉の策で、2コマずつ書きだしてペイントで貼り合わせるという、地道な作業を行いました(笑)


過去の描いた絵をたまに省みると、もちろん拙さが一番で悶絶ものなんですが
当時どうしてこうなったw的なやりとりなど思い出せて楽しいのです~(´艸`*)


そんな限りなく俺得なブログにご訪問下さる皆さま、本当にありがとうございますv

通販してくださった方やSNSなどで「いつもこっそり覗いてるよ」とか言われるとなんか本当に嬉しいです。

どんどんこっそり覗いてやってください( ̄▽ ̄)

その代わりにダリ子もこちらから覗いております…(怖



そんなこんなで(?)原稿にまみれながらも息抜きでバレンタイン2016絵描きました~



そしたら、お話つけてくださいました~~~~~~~ん!!!

うっひょおお!!!


SNSでUPした絵がこちら↓




0214.jpg


タイトルは「パニエと太ももが描きたくて」←それタイトルじゃないw

チョコレートは素材をお借りしました。
むりやりバレンタインにこじつけたとかそんな…w



これを見たもずくさまが、現パロ構想をこっそり教えてくださいましたのん!


で、お話つけてくださったので強奪してきましたーーー!!!!!

にゃああ♡


絵の事は一旦忘れて、お話をご堪能ください(´艸`*)



*******************


【現パロ設定】
夕鈴→介護士を目指して頑張る下町娘!大学3年生♪
黎翔さん→某有名財閥社長!20代後半?

ある事件をきっかけに出会ったお二人。
黎翔さん押せ押せで晴れて交際開始から8月程のラブラブ交際中。
去年のクリスマスにようやく夕鈴のお初をいただいた黎翔さんです☆




***


バレンタイン――

それは世の女の子、男の子、そして恋人達にとって、大切な日。


(……失敗しちゃったかな…)
夕鈴は世界的にも有名なとある豪華なホテルのロビーで、一人ソファに座り、靴擦れして赤くなってしまった足を擦っていた。
履き慣れないハイヒールに、こちらも着慣れないフンワリブロンズレッドのワンピース。
見るからに高級そうなその生地の質感やデザインに、庶民な自分が着られているようで落ち着かない。
(チョコレート…渡したかっただけだったんだけど…)
今日はバレンタイン。
心を込めて作ったチョコレートを手渡したくて、黎翔が出席すると言っていたチャリティーパーティが開かれているこのホテルまで来てみたのだが、黎翔の叔母である瑠霞に遭遇してしまい、こんな格好をする事になってしまった。
黎翔を呼んできてやると言われて、瑠霞がパーティ会場へ向かってから、早1時間。
キラキラと光る豪華なシャンデリアと重厚な絨毯、行き交う人々の美しい所作や聞き慣れない外国語。
そんな世界に置いて行かれ、落ち着かなくてウロウロと歩き回っている内に、靴擦れしてしまった。
座り込んでみると、ますます自分がこの場に馴染んでいないように思えて、気持ちは次第に沈んでいく。
せめて格好だけでも可愛らしい装いにしてくれた瑠霞に感謝しながらも、やはり自分はこの場には相応しくなく、黎翔の住む世界は見上げても見えない位に遠いと感じた。
普段は黎翔が夕鈴の住んでいる団地や下町の商店街、バイト先の老人ホームへ来てくれる。服装や乗ってくる車は恐らくとんでもなく高級な物なのだろうが、そんな事は忘れてしまう程、黎翔が自分を見つめてくれるので、すっかり勘違いしてしまっていたのだ。
黎翔はこの国一番の財閥である珀コーポレーションの社長であり、その動向がワイドショーを賑わす程の有名人だ。
庶民の自分では、彼の隣を歩く事はできない。
(……帰ろう、かな)
黎翔は仕事中なのだ。チョコレートなど、次に会えた時に渡せればいいのだから。
そう思い、再び靴を履こうとした時だった。
「夕鈴!」
聞き慣れた、男らしい声が、高級ホテルのロビーに響いた。
「夕鈴?!」
「えっ!」
驚いて屈んでいた身を起こすと、ロビーの中央で必死に辺りを見渡す黎翔の姿があった。
「夕鈴!」
ひどく慌てた様子で人混みの中から自分を探そうと、目を凝らしている。
いつもの落ち着いた雰囲気の黎翔とはまるで違っていて…夕鈴はポカンと呆けながら、そろそろとソファから立ち上がった。
「れ、黎翔さん…?」
その、小さな声が、届いたのか。
弾かれたように黎翔が振り返り、夕鈴を見つけると人を掻き分けながら駆け寄り、その両手で夕鈴を抱きしめた。
「ゆーりん!!」
「えっ?あ、あのっ?!」
ギュウッと抱きしめられて、夕鈴は顔を真っ赤にして驚いた。
「ごめん!叔母さんがなかなか僕を見つけられなかったみたいで!もう帰ってしまったかもって!」
少し上がった息で矢継ぎ早に説明されて、必死に駆けつけてくれたのを感じる。
「い、いえ、私が、勝手に来てしまっただけですから…あ、あの、黎翔さんは何も悪くないです」
熱い黎翔の身体に、嬉しい気持ちが沸き起こり涙が溢れる。鼻をすする音に黎翔がやっと腕を緩め、夕鈴を覗き込んだ。
「ゆーりん?」
「いえ…グスッ、あ、会えないと思ってたから、嬉しくてっグズ」
「待たせて、ごめんね?」
黎翔はそっと夕鈴の涙を拭う。そうして少し驚いたように身を離した。
「ゆ、ゆーりん、その格好…」
「あ、瑠霞さんがせっかくだからって、貸してくださったんです」
照れた様にワンピースの裾をつまんでヒラヒラさせ黎翔を見上げると、黎翔の困った様な表情に出会う。
(……あ…)
似合ってないのだと、恥ずかしくなって思わず背を向けて言い訳する。
「ご、ごめんなさい!似合わないですよね!い、今、着替えてきますから!」
しかし逃げ出そうとした瞬間に再び黎翔の腕に捕らわれた。
「露出多過ぎだろ…っ」
「へっ?!」
掠れて届いた黎翔の言葉に、驚いて身を固くする。
(い、今、なんて…?!)
いつもの黎翔の口調ではない熱い溜息のようなその言葉と、自分を抱きしめる腕の力に一気に胸の鼓動が激しくなった。
思わずよろめいて、ハイヒールが靴擦れを擦った。
「いたっ」
「えっ?」
慌てて腕を緩めた黎翔に、夕鈴は火照った頬を隠しながら
「ちょっと靴擦れしちゃって。こんな高いヒール、初めて履いたので…」
「大丈夫?座って…」
黎翔が夕鈴の肘を掴んでソファへ座らせる。すると黎翔は夕鈴の足元に膝をついて靴擦れした夕鈴の足を自分の膝へ乗せた。
「ちょっ?!黎翔さん?!」
慌てる夕鈴には構わず壊れ物を扱うように、そっとその足から靴を外す。
「ああ、これは痛そうだね…夕鈴、絆創膏持ってる?」
「持ってますけど、じ、自分でやりますから!」
「ダメだよ、これ以上足を上げたらスカートめくれちゃう」
「えっ?!」
慌ててスカートの裾を押さえる夕鈴に、黎翔がクックッと笑う。
「~~?!からかったんですね?!」
「違うよ?クックッ…」
楽しそうに笑う黎翔に、夕鈴は真っ赤な頬を膨らませて睨んだ。
「ど、どうせ、こんな素敵な格好、慣れてないです!似合いませんよね!」
すると黎翔はポカンとして、次に真剣な顔になると、スカートの裾から出た夕鈴の白い足を指先でスルリと撫でた。
「とても似合っているよ?可愛くて、眩暈がした…」
「ひゃっ?!」
思わず出た声に、黎翔が妖艶な笑みを浮かべる。夕鈴は再び高鳴る鼓動を意識してしまわないように急いでカバンから絆創膏を取り出した。
「これで…よしっと」
黎翔は夕鈴の足の甲に絆創膏を貼ると、そっと夕鈴の足を下ろし、自分も夕鈴の隣へ腰掛けた。
「あ、ありがとうございました!」
「ううん。それより夕鈴、それ、もしかして…」
黎翔の視線の先には、夕鈴のカバンと共に置かれた紙袋。手作りのチョコレートを入れてきた袋だった。
「あ、はい…あの、バ、バレンタインなので…」
夕鈴は本命の用事を思い出して紙袋を膝に乗せ、中から丁寧に包装したチョコレートを入れた箱を取り出す。
「れ、黎翔さんなら、きっと沢山貰うんでしょうけど…」
「貰わないよ?僕モテないし」
(どの口が…?!)
グッと言葉を詰まらせて黎翔を見るも、黎翔の視線は夕鈴の手の中にあるチョコレートに釘付けで。
「よ、良かったら…食べてください」
(な、なんだか…)
「ありがとう、ゆーりん。開けてもいい?」
(すごく嬉しそう…)
「わぁ…、美味しそうだね。夕鈴の手作り、だよね?」
一つ手に取ると、まるで宝石の様にチョコレートを眺め、そうして口に入れるとゆっくり顎を動かして味わう。
「甘さ控えめにしたつもりなんですけど…どうですか?」
「うん、美味しいよ。あ、ブランデーが入ってるね?」
「はい!お父さんが商店街の人に頂いて大事に呑んでるのを、ちょこっと貰っちゃいました」
褒められてホッとして、満面の笑みになる夕鈴に、黎翔は眩しそうに微笑む。
「一度に食べてしまうのは、勿体ないな。また後で食べるね」
そっとチョコレートを仕舞い、夕鈴から紙袋をもらう。
「夕鈴、食事はまだ?良ければこの上のレストランに行かない?」
「え、でも黎翔さん、まだお仕事じゃ…」
「ううん。挨拶も寄付も終わったから、もう帰れるんだ」
「でも…でも、こ、ここのレストランって…すごい高級ですよね…私テーブルマナーとか自信ないです…」
俯く夕鈴を、黎翔が覗き込む。
「マナーなんて、気にしなくていいよ?誰も見てないし」
黎翔の気遣う言葉に、しかし夕鈴は余計に先程の感傷を思い出してしまった。
――住む世界が違う…
黎翔は気にしないと言うが、周囲は黎翔に注目している。冷静になってみれば、いつもよりも高級そうな礼服を着た黎翔は、いつもよりも更に高貴な雰囲気を放っている。いくら自分が着飾っても、細かいマナーや立ち振る舞いには、絶対に粗雑な所が出てしまうだろう。そんな相手を連れていては、黎翔の評判にも傷が付いてしまうかも知れない。
足に張られた絆創膏が、キレイなハイヒールから覗いているのが、ひどく恥ずかしく思えた。
「や、やっぱり私…!」
慌てて立ち上がる夕鈴に、黎翔も立ち上がり腕を掴む。
「どうしたの、ゆーりん?」
「な、何でも…」
しかしその瞳に光る涙を、黎翔は見逃さなかった。
「何でも無くないよね?泣くほどここのレストランが嫌いって訳じゃないだろうし…」
涙を見られて誤魔化せないと、夕鈴は項垂れた。
「えっと…その…私には、似合わないっていうか…不釣り合いっていうか…」
「不釣り合い?」
「き、今日初めて黎翔さんの世界を目の当たりにして…わ、私…」
自分で言って更に現実を見たような気分になり、震える。その様に、黎翔はフーッと溜息をついて突然蝶ネクタイを取り、シャツのボタンを外して髪を無造作にかきむしった。
「…黎翔、さん?」
前髪が下りて、少しだけいつもの黎翔に戻ったように見えた。
「僕の世界って、何?」
「えっ?えっと…」
黎翔の真顔に、怒らせてしまったのかと後ずさる夕鈴を、黎翔の腕が留める。
「このホテル?この服装?それとも…笑顔の裏でどれだけ金を出させるか、腹を探り合う僕の周囲の人間達?」
「そ、そんな!」
「そうだよ。これが…僕の世界だ…」
前髪の間から、昏い、紅い眼が夕鈴を見下ろした。
「汚い腹の内を隠すために、皆高級な物を纏い、高級な物を食し、虚栄を張り合う。美しく格式高い物を好み、それらを使ってみせる事で、己の力を誇示する。騙し合い、潰し合う。それが、僕の世界だった…」
「れ…」
「けれど、今は違う」
そう言うと、黎翔は突然夕鈴を抱き上げた。
「きゃっ!」
ロビーの真ん中での出来事に、周囲の客や従業員が夕鈴達に注目する。
「れ、黎翔さん?!」
夕鈴は恥ずかしさに暴れる事もできず、間近に迫った黎翔の顔を見つめた。
「夕鈴、君が、僕の世界の全てだ」
「え……?」
真っ直ぐ見つめられ、告げられた言葉。
「君と出会い、君の世界に触れて、僕はやっと生きていて良かったと、思えた。君と一緒にいると、心が休まる。君の笑顔を見ると嬉しくて…君の声を聞くと心が躍って…こうして抱きしめると、胸が熱くなる」
ギュッと抱きしめられる。
「君は僕の世界を明るく照らしてくれる太陽なんだ。太陽無しでは、呼吸もできない。何も、生まれないよ。だから、君が、僕の世界の全てなんだ」
「黎翔さん…」
遠く、高く、届かないと思った黎翔の世界。だが今はこんなにも側で、自分を必要としてくれている。
(こんな、こんな私でも…いいのかな?黎翔さんの隣にいても…)
「ゆーりん、可愛いよ。いつも可愛いけど、今日は僕の為にここまで来てくれて、余計に可愛いから…つい、見せびらかしたくなっちゃったんだ」
「そんな…」
ストレートに褒められて、頬を染める。
「だからもう少しだけ。ここのレストランが嫌なら、どこか他の店でもいいから、僕と一緒に過ごしてくれる?」
「う………」
恥ずかしくて固まる夕鈴に、二人の会話を聞いていた周囲の人達も固唾を飲む。
「は、はいっ」
夕鈴の返事に、ホッと安堵の溜息が周囲から漏れた。
「ありがとう、ゆーりん」
黎翔のいつもの優しい眼差しに、夕鈴も心の底から安堵した。
(良かった―――)
ただバレンタインのチョコレートを渡したかっただけだったのが、こんな風に互いの思いを確かめ合う事になろうとは、思いもしなかった。けれど、黎翔の事をより深く知る事ができて、更に黎翔への気持ちが深まったのを感じ、これまで父や弟、商店街の皆に義理チョコを配るだけだったバレンタインというイベントに、夕鈴は初めて感謝したのだった。



そうして、結局このホテルの上層階にあるレストランへ向かう事にした二人――
「じ、自分で歩きます!」
「だめだよ、ゆーりん。この靴合わないみたいだから、もう履かない方が良いよ」
黎翔はその腕に愛しい兎を抱いたままエレベーターへ乗り込んだ。他の乗客に微笑まれ、恥ずかしそうに俯く夕鈴へ、黎翔はそっと声を掛ける。
「ゆーりん、明日は授業何限から?」
「え、あの…月曜は3限からですけど…」
ポーンと鳴ってエレベーターが止まり、乗客が一人降りる。
「そう…じゃあ、今日は泊まれる?」
「へっ?!」
夕鈴の素っ頓狂な声に、他の乗客は笑いを耐える。
「パーティの後、疲れたら休めるように一応部屋が取ってあるんだ。食事が終わったら、二人で休んで行こう?」
「そ、それはっ」
再びポーンと鳴って、乗客が名残惜しそうに降りて行った。
「あ、チョコレート、常温でも大丈夫かな?」
突然話を逸らされて、夕鈴は自分だけ変な事を考えていたのかと顔を真っ赤にして小さな声で答えた。
「れ、冷蔵庫に入れておいた方がいいと、思います…溶けたら中のブランデーが出てきちゃうかも…」
「中のブランデーが…」
黎翔の静かな声に被せるようにポーンと鳴り、最後の乗客が降りて行った。
エレベーターの扉が閉まると、黎翔はそっと夕鈴の胸元へ顔を近付けた。
「れっ黎翔さん?!」
「ねぇ、ゆーりん。この中、下着付けてるの?」
鼻先で夕鈴の胸の谷間を擦る。
「ひゃあっ!!」
驚く夕鈴に構わず、黎翔は次にパクリとその柔らかい肉を食んだ。
「やだ!黎翔さん!!」
いつ開くとも分からないエレベーターの扉の前で、そんな恥ずかしい事をされては耐えられず、夕鈴は思いっきり黎翔の頭を押した。チュパッと黎翔の唇が離れた途端に急いで胸元を隠す。
「ななななななにするんですか~!!」
「ごめん、だって美味しそうで…」
「おいっおいっ美味しそうって?!」
「ふふふ…(チョコレート、多分溶けるよね…)」
黎翔の脳内妄想など想像する事もできず、夕鈴はその腕の中でプルプルと震えるのだった。


おしまい♪

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うっひょおお(´▽`*)

あまあまなお二人をありがとうございます!!!!!

グッジョブ私!←

設定の時点でおいしすぎてそれどこで読めるんですかぁ!って詰め寄ったら、まだもずくさまの脳内なんですって☆

楽しみにお待ちしておりますよぉ!!!←


また妄想を刺激できる何かを描けたらいいなぁ~~~~~~(*´Д`)


もずくさま、ありがとうございました!!!!

頂き物♪ 



先月の私の誕生日に、ぴいこさん、るるさん、ぼんちゃんでコラボしてプレゼントしてくださいました~♪


ものすっごい私得な、ニヨニヨ作品ですがあまりに嬉しかったので自慢したいと思います(´艸`*)


ダリ子得なキーワードもりだくさんです~(*´ω`*)つ







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眠い・・・。
とにかく、眠い。
あれもこれもやりたい事はあるのに、あまり気分も乗らない。
そしてやらなければならない事は、それの何倍もある。
の、だが。
「・・・無理。明日にしよ・・・」

今日は悪戯されないといいなあ。
全く、最近は多くて困る。

そう思いつつ、私は寝惚け眼で立ち上がった。





その日も几鍔は、いつものように見回りがてら明玉の勤める飯店に顔を出した。

相変わらずこの店は繁盛していて、情報を集めるにはもってこいの場所だ。
ついでに怪しい人間が紛れ込んでいないか見回すと。

「・・・何だ、ありゃ」
入ってすぐの卓に、小さな人だかりが出来ていた。
そこにはこの辺りではあまり見ない黒猫が一匹、ちょこんと乗っている。

「いらっしゃい几鍔さん。美人な猫でしょ?」
すいすいと慣れた様子で注文を取りに来た明玉が言った言葉に、その猫はぴくりと反応した。
「いいのかよ、食い物屋に猫なんか入れちまって」
料理に手を出したり、客に悪戯するかもしれないではないか。
そう考えながら、几鍔の目は猫へと向けられたままだった。
何故なら向こうも姿勢を正してじっとこちらを見ていたのだから。

(・・・何だ?知らねえ猫だよな・・・)
野良猫はいるが、まじりっけなしの黒猫なんて記憶にない。
それに良く見れば首輪をしている。なら、どこかの飼い猫だろう。
几鍔本人が御用聞きに行く事はあまりないが、客の家の猫なのかもしれない。

(このままここに置いといちゃ、帰れねえか)
庶民に動物を飼う余裕は、まだないのだ。
先王時代は荒れたのだから。
そんな中動物を飼っているのなら、それなりに裕福な家か貴族だろう。
手っ取り早く飼い主を探すなら、大店の息子である自分が動くのが一番早い。

そこまで考え、近付いて行くと。
「にゃー」
何故か猫の方から几鍔に擦り寄ってきた。
「何だ、懐っこいヤツだな」
これだけ人に慣れているのだ。飼い猫なのは間違いない。
そう確信しつつ、抱き上げる。

「あら、この子、首輪ついてたのね」
「ああ。飼い主はこっちで探しておく」
「さすが几鍔さん、助かるわ!さすがにここには置けないもんねえ」
内心では困っていたのだろう。
明玉は、ほっとしたように笑った。

明日はどこの屋敷に御用聞きに行く奴がいたんだったか。
すぐに見つかるといいが。
そう考え、黒猫を連れ帰った。
―――の、だが。

「どうしたんだい、その猫」
家に着いた途端、祖母に見つかってしまった。
気付かれないようにわざわざ裏口から入ったのに。

「―――迷い猫だ。これから飼い主を探すんだよ」
内心の不安を押し隠し、几鍔はさっさと自室へ入ろうとした。
祖母は根っからの商売人だ。
金になる事なら、多少の無茶は通してくる。
だからこそ見つからない内に飼い主に返してやりたかった。

「ふうん・・・」
そんな几鍔の思いを他所に、女主人は猫をじろじろと見回していて―――嫌な予感しかしない。
「随分綺麗な猫だねえ。これなら金持ちが喜びそうだ」
「―――だから、その金持ちが飼ってんだろ。明日御用聞きに行くヤツに、ついでに情報を仕入れさせるんだよ」
「別に同じ飼い主じゃなくてもいいんじゃないかい?寂しがってる年寄りなんて、いくらでもいんだろ」
不気味に笑いながら手を伸ばしてくる様子に、几鍔は呆れてしまった。
やはり祖母には、この猫が金に見えるらしい。

「おい、ばーさん―――」
溜息を吐きつつも、邪な考えを正すべく説得しようとした時。
「痛っ!何すんだい!」
猫は女主人の手を器用に前足で叩き、几鍔の肩へとよじ登った。
そこまで行けば、背の低い老婆からは届かないと判っているらしい。

「―――ちっ。折角良い人を紹介してやろうと思ったのにさ」
「だから先刻から飼ってた家探して返すっつってんだろ。ったく・・・」
「そんな礼儀知らずな猫なんざ、鍋にでもして食っちまえばいいんだよ!」
「おいおい・・・」
これは早々に避難させた方がいいんじゃないだろうか。
そう考えつつ、几鍔はぷりぷり怒る女主人を見送った。

だが黒猫は、少し目を離した隙に何処かへ行ってしまったのだった。





 新しい朝の光を浴びて、克右は眩しさに目を顰めた。
「ん……」
 そして、無意識に共寝をしている温もりに手を伸ばす。
「……ん?」
 克右の手は柔らかな手触りを感じることなく、虚しく寝具の中を泳ぐ。
 そうしているうちに、次第に目が覚めて、克右は身体を起こすと寝台の上を見た。居なくなってしまったのかと一瞬だけ焦った克右だったが、直ぐに安堵の溜息を吐くと語りかけた。

「なんだ。昨日はあんなに仲良くしたのに、つれないな」
 相手は、寄り添いあって眠ったのが嘘だったかのような冷たい態度だ。
 昨夜は暗かったのでよく分からなかったが、朝の光を浴びる肢体はしなやかで美しい。だからこそ、この態度なのだろう。己の魅力を知っているのだ。
 克右は苦笑いをしながらその頬を撫でた。

「にゃお」
と、まるで抗議をするかのように鳴く猫。その猫は、昨夜几鍔の元を逃げ出した猫であった。
 夜道を歩いていた時、たまたま帰宅途中の克右と出会い、そのままともに一夜を過ごしたのだった。

 猫の抗議を受けて、克右は乱れた夜着を直すと手早く髪を束ねる。
「腹が減ったのか?」
 克右が鍋を手にした途端、猫が何故か「シャーッ!」と毛を逆立てた。
 しかし、台所で有り合わせの食材で朝餉を作り始めると次第に大人しくなっていった。克右の姿を眺めながらのんびりと顔を洗っている。克右は出来上がった朝餉を、猫にも分け与えた。
 飼われていた猫なのだろう。行儀良く完食すると、まるで褒美を与えるように克右にすり寄る。

 克右はすっかり猫のことが気に入った。
「お前さん、うちの猫になるか?」
 克右に撫でられて、猫は心地よさそうに喉を鳴らす。

 元の飼い主が見つかるまで預かろう。見つからなければ、ずっと手元に置けばいい。そう思って克右は、猫とともに出仕した。

 しかし、そんな克右の思いなど知りもしない猫は、克右が行きずりの他の猫を構っている間に姿を消してしまったのであった。





政務に一区切りをつけた昼下がり。
黎翔は足早に後宮へ向かっていた。
何故かと聞かれるまでもない。
やっと手に入れた、最愛の花嫁に会う為である。

(全く・・・もう少し気を遣ってもいいんじゃないか?)
こっちはばりばりの新婚だ。二人きりでイチャつきたいに決まっている。
それなのに仕事は暇になるどころか、日々増えてゆくばかり。
しかも以前より夕鈴が忙しくしているせいで、黎翔としては全然物足りないのだ。

頑張っている彼女は嫌いではない。
元気に動き回っている姿だって、大好きだ。
でもせめて今くらいは、もっとイチャイチャを優先しても良いと思う。

だから予め侍女を遠ざけてから、書物に向かって難しい顔をしている夕鈴を、後ろから抱き締めた。
「ぎゃっ」
「また勉強してるの?少しはゆっくりすればいいのに」
相変わらず慣れてくれない彼女は、既に頬を染めている。
「へ、陛下!?お仕事は・・・」
「資料待ちで時間が出来てさ」
上半身ごとくるりと振り返った夕鈴の頬に手を添え、額に一つ口付けを落として。
彼女の気が逸れている間に、本を閉じる。
せっかく二人きりの時間を邪魔されては堪らない。

本当の事を言ってしまえば、資料待ちと言うのも半分は嘘だ。
後宮へ戻る時間を作りたくて、わざとまとめて指示を出したのだから。

「ゆーりんも、少し休憩ね」
長椅子へ導き、座った自分の膝に乗せて。
再度ぎゅっと抱き締めてから、黎翔はほうっと息を吐いた。
「あ、あのっ!休まれるんでしたら、お茶をっ」
「お茶はいいよ。それより、やる気を補充させて」
じたばたと暴れる彼女を抑え込み、更に抱き込んでゆく。
この世でただ一人、自分を癒してくれる存在なのだから。

と。
「―――陛下が、それで頑張れるなら・・・」
不意に大人しくなった夕鈴が、真っ赤になりながら襟元にしがみついてきた。
きっととても恥ずかしいのだろう。
目を瞑り顔を伏せてしまっているその姿に、胸がどくりと跳ねる。

(―――困ったなあ)
元々大切で大切でしょうがないお嫁さんにこんな可愛い事をされて、指を咥えて見ているだけなんでできる筈がない。
本当に夫婦になった今となっては、尚更だ。

もう、仕事に戻らなくていいんじゃないだろうか。
だって周りが知らないだけで、こっちは新婚ほやほやなのだ。
少しくらいサボってお嫁さんを可愛がったって、バチは当たらないに違いない。
(可愛すぎるゆーりんが悪いし・・・)
責任転換をしながら、頬へ手を伸ばそうとした時。

(―――?)
ふと、視線を感じた。
侍女は下げたし、浩大は気を利かせている。
夕鈴が戻ってからは警備も厳重にしているのだから、ここまで間者が入り込める筈もない。

一体何かと思いつつ、夕鈴に気付かれないよう周囲を見回すと。
「―――」
「―――」
柱の上に彫られている飾りに、黒猫が丸まっていた。

(何故こんな所に?)
確かに動物まで取り締まれるほど、人を割く余裕はない。
そこまで信用できる者は多くないのだから。
だが、そもそも後宮は王宮よりも奥にある。
その幾重もの目を擦り抜けて、こんな所まで入ってくるとは。

見たところ大人しくしているから、害はないのかもしれない。
とは思うものの、いつ暴れ出すかも知れないのだ。
万々が一にも夕鈴が傷つく可能性を、黎翔は見過ごせなかった。

(―――浩大に捕まえさせるか)
そうと決まれば、後はここから遠ざければ良い。
例え相手が猫だとしても、最愛の妻を盗み見られるなど許せないのだから。

黎翔はしがみついている夕鈴の指をほどき、頬へ手を伸ばした。
そしてそのまま上向かせ、唇を寄せる。
「―――っ」
啄ばむように何度も角度を変えて口付けてから、次第に深く貪ってゆく。
こうなると、慣れない彼女は周りにまで気が回らない。
だから夕鈴から力が抜けたほんの一瞬、黎翔は殺気を放った。

さすがは獣。危機意識は強いらしい。
ぴくりと体を揺らした黒猫は、すぐに逃げ出して行ったのだった。





 日が傾き、柔らかな橙色の光がさす屋根の上で、夫婦の元から逃げ出した猫は、ひなたぼっこをしながら毛繕いをしている。
 そこへ、猫も気がつかない足取りで歩み寄る人物がいた。浩大である。

「侵入者見っけ!」
 浩大は、猫の隣に腰を下ろすと楽しそうに言った。
「あれー?でも、本当にへーかが言ってた猫かナ?すげー美人ダネ。へーかはまるで手がつけられない猛獣みたいに言ってたケド」

 浩大は、思わずくくくっと笑い出した。猫はすいっと立ち上がると、浩大から距離を取って再び腰を下ろす。




大ちゃん



 我関せずとばかりに毛繕いをしている猫の顔を、浩大は覗き込んだ。

「そんな所に居ないでこっちにおいでヨ、ダリ子」
 ダリ子と呼ばれた猫は、しっぽの先から頭の先までピンと硬直させた。
「驚いてる?」
 浩大は、猫と距離を詰めて座る。
「俺ってば優秀な隠密だからネ。異国の文字も読めるんだ」
 そっと手を伸ばして猫の首輪についてる名札に触れる。未だ硬直しているのを良いことに、浩大はダリ子を抱き上げると頬を摺り寄せた。

「かっわいー」
 浩大は、ダリ子の反応を楽しむ。
「そーだ。でーとしよっか」
 浩大は、にかっと笑うと立ち上がった。

 一人と一匹は、木に登ったり屋根を渡ったりと、王宮内の散策を楽しむ。

 屋根の上から、イチャイチャしている国王夫妻を覗き見したり、老師の元へ赴き茶菓子をたかったり。その合間に、怪しげな動きを見せる官吏の情報を紙に書き記す。
 浩大は猫が丁度良い間合いでついてきてくれる事が嬉しくなり、王宮内を案内するように歩き回った。

「あーあ。またやってるヨ」
 回廊には、怒りながら歩き去る夕鈴と、それを追う黎翔の姿がある。かと思えば、別の回廊には早々に退出しようとする水月の姿。政務室には眉間に深い皺を刻む方淵と、胃の辺りに手を添えて眼鏡を押し上げている李順の姿が見える。

「あっちは軍部。ほら、ダリ子が一夜を共にしたヤツもいるでしょ」

 浩大の言葉を受けて、猫は何か言いたそうに浩大を見上げた。

「本当、頭良いよなー。お前」
 浩大は元の屋根に戻ると、猫を抱き上げた。猫はすっかり馴染んで、されるがままになっている。
 そんな一人と一匹を夜の帳が包み込む。

 辺りはすっかり暗くなっていた。

「お前。俺と一緒に暮らすか?」
 浩大の言葉に、猫は逡巡しているかのようだった。そんな猫の迷いを気にもとめず、浩大は猫を下ろすと立ち上がった。

「猫は“鼠取り”が、とくいだって言うしネ」
 ひらりとこうだいが飛び上がると、今まさに浩大がいた場所にくないが突き刺さった。

 穏やかな空気が一転する。

 猫は夢中で逃げ出した。





胸の下へ何かが潜り込む感覚に、私は目を覚ました。
どうやらベッドに行こうと思っただけで、そのまま眠ってしまったらしい。

「うー・・・何なん・・・」
起きた原因が何だったのかと目を向けると、黒い塊が胸にしがみついていた。
「ダリ・・・」

寝惚けた頭でぼんやりと思い出すと、良い夢を見ていたと思う。

アニキは細マッチョで格好良かったし。
こっくーはやっぱり萌えなかったけどいい人だったし。
夕鈴さんは可愛かったし。
大ちゃんはいい子で最高だったし!
ずっと見ていたい夢だっ―――。

「―――」
そこまで考え、怖い事まで思い出してしまった。
悪人面のおばば様や、本当に温度が下がったと錯覚しそうな殺気や、目の前に突き刺さる刃物。
考えただけで震えが走る。

動物は飼い主に敏感だと言うから、自分のこの気持ちがダリに伝わったのだろうか。
まるで涙目になって怯えている姿に、首を傾げた時。
「―――ん?」
そう言えば、夢の中で私は猫になっていたんじゃなかっただろうか。
真っ黒な、それこそダリみたいな。

もし同じ夢を見ていたなら、この怯えようも判らないでもない。
だって本当に怖かったのだから。

「―――はは、まさか」
自分の考えが二次脳すぎる気がして、つい乾いた笑いが出てしまう。

「もうこんな時間・・・」
本当はやりたい事もやらなければならない事も、山積みだけど。
「やっぱ、明日にしよ・・・」
全部諦めて、私は今度こそベッドへ向かったのだった。





*****おしまい*****



わーい\(^o^)/

改めて先生、魔女の人、ぼんちゃん(ここは変わらないw)ありがとうございました…!!!

読んでてうっかりニヨニヨが止まらないあやしい人間になっちゃいます(´艸`*)

…いつもとか言っちゃダメ☆



ダリ(うちの黒猫)が、私のお布団に毎晩のようにオシッコするんですよ…

目の前がトイレなのに…

ウ○チはちゃんとトイレでするのに…

ネコがトイレじゃないところでオシッコするのは、何かを訴えたい時らしいのですが

ダリはこうして夜な夜な私の意識を伴って(?)白陽国へ旅してたらいいなぁ~~~~

そしたらオシッコくらい…許す…許すよ…orz


そうして私は毎晩お布団の上にペットシート何枚も被せて眠るのでした~(^_-)-☆

ヒットしない日はもう目も当てられない状態に…



そんなダリ子の日常と嗜好をたくさん取り入れて素敵なお話創り上げてくださいました~

ホントにすごい!ニヨニヨでしょう!?←私が


ありがとうございました(*´ω`*)


原稿、がんばります・・・←